コンピュータ技術の発展とともにAIも進化を遂げてきた。
人間の知的能力をコンピュ-タで再現するのがAIであるが、特定の分野、条件においてはすでに人間を上回る成果も見せている。例えば去年、将棋ソフトウェア「ポナンザ」が将棋の名人を破るといった出来事もあった。そんなAIを使った試みの中に、2011年~2016年に行われた「ロボットは東大に入れるか」というプロジェクトがある。

「ロボットは東大(東京大学)に入れるか」


国立情報学研究所が中心になって発足したプロジェクトで、あらゆる分野の人工知能の技術を駆使して、AIによって東大合格を目指すというプロジェクトである。これには国私立大学、国立研究機関の関係者が多数参加し、ベネッセなどの教育・出版の企業も協力している。このプロジェクトで作られたAI「東ロボくん」はビッグデータ、ディープラーニングの技術を中心に開発され、最終的に5教科8科目の試験で平均偏差値57という結果を出した。
この結果は全受験生の上位20パーセント程度で、平均よりはかなり上の成績ではあるが、東大合格までにはまだまだ及ばないといった数字である。5年間進められてきたプロジェクトは、これ以上の結果は現在の技術では望めないということで、この数字を最後に凍結された。

AIに不足する読解力

「東ロボくん」が東大合格まで点数を上げられなかった理由として、問題文の文脈を理解できない、というコンピュータの弱点がある。計算や暗記は得意でも、文章の意味を理解できないので、人間には簡単な問題でも、とんちんかんな答えを選んでしまうのだ。特に点数の低かったのが英語のリスニングなのだが、音声自体は認識できても、その文脈を理解する「読解力」が不足しているのである。

読解力でも人間を上回るAI「SLQA+」

「東ロボくん」の東大受験断念から2年後の2018年1月、「読解力」でも人間を上回るAIが開発されたというニュースが流れた。
中国のアリババ・グループ・ホールディングが開発したAI「SLQA+」が、スタンフォード大学が作ったAIの読み取りテスト向けデータセット「SQuAD」において、僅差ではあるが、人間以上のスコアを出したのだ。ちなみにマイクロソフトも同程度のスコアを出している。このテストでAIが人間のスコアを超えたのは初めてである。
ただこのテストはある程度限定的な条件に基づいたものなので、単純にAIが人間の読解力を凌駕したとは言えないようだ。もし「東ロボくん」に「SLQA+」の持つ読解力が備わっていれば東大に合格できたかどうかは分からないが、AI技術は新たな方面での進化を続けているということは間違いないだろう。

[執筆:ミステリー小説家
[最新更新日:2019年2月20日]