インターチェンジから県道に入り、海沿いの国道へと左折する。海を右手に見ながら北に向かって走っていることになる。
 道路の至るところに改修の跡が見てとれた。その多くは、大震災時の津波による被害を受けてのものだろう。
 道路を走りながらあることに気づいた。高速を下りてからカーナビを見ることもなく走っていたのだ。つまり、“知っている道路”だった。剛は、そのことに気づいて薄気味が悪くなった。いったいどういうことなのだろう。
 この土地に足を踏み入れたのはこれが初めてのはずだ。それは間違いのないことだ。それなのに道路を知っているとすれば、この土地についての記憶があることを意味している。
 その記憶は夢の中で得たものだろうか。それが現実に存在する町のものと偶然一致するなどということがあるだろうか。
 しかし、地図を確認したかぎりでも、全体の地形、道路や公共施設の所在などが夢の中のそれと一致しているとしか思えないのだ。

砂浜

 では、どうして、この記憶が自分の頭の中にあるのだろうか。どう考えても説明がつけられそうになかった。考えるだけで頭が痛くなりそうだ。
 突然、この地に自分を知っている何者かが潜み、自分を待ち構えているような感覚にとらわれた。神経がどこか過敏になっているのかもしれない。
 剛は無理にその感覚を打ち消そうとした。根拠の無いことを考えるのはよそう。夢で見る町を訪ねてきただけなのだ。うまくすれば、あの女性と会うことができるかもしれないのだ。
 ついそう考えてしまうのだが、すぐにその考えには修正が必要であることに思い当たる。
 これまでにも同じような思考パターンを何度か繰り返していた。夢の中に現れる町は今から二十年ほど前の姿なのだ。だとすると、そこで会う女性がこの地に実在するとしても、夢に出てくるのと同じ年齢であるはずがなかった。