(前号までのあらすじ)
我孫子市に住む、千葉フロンティア銀行員である剛は、幼い頃から見続けてきた夢の中で長い時間をかけて一つの町を築き上げてきた。その海辺の町は夢とは思われないほどの現実感を伴ったものだった。それがどういう意味を持つのかはまったくわからなかった。
そして、横浜に住むOL美貴は、繰り返し見る悪夢に悩まされていた。やはり夢の舞台は地方の海辺町だった。夢の内容は、おぞましい出来事へと発展していた。悩む美貴は、夢が持つ意味について調べようと考え始めていた。

 その後も町が、剛の夢の中から消え去ることはなかった。それどころか、以前と比べて、その頻度は増しているようにさえ思われた。
 あるとき、町の中に佇みながら、何か引っかかるものを微かに感じたことがあった。神経を集中して意識の中を見渡し探ってみたが、その正体を見つけるどころか、それに繋がるような手ごたえすら感じることができなかった。
 意識の外側から何者かが自分に何事かを囁いている。それも躊躇いがちに。振り向くと、それは、最初から何もなかったかのように存在を消し去る。そんな感じだった。
 それは、剛自身の身近な関係にあるか、そうでなければよく知っているだれかのようにも感じられた。ただ、そう感じる根拠があるわけではなかった。
 そう感じたのは、剛の意識に触れてきたものに対する一瞬の印象によるものだった。感触的には、それには悪意のようなものが微塵も含まれていなかった。むしろ、遠慮がちに何かを伝えようとしているように感じられた。