(前号までのあらすじ)
千葉県我孫子市に住む、千葉フロンティア銀行の二年目行員である剛には、幼い頃から見続けてきた夢があった。剛は、その夢の中で長い時間をかけて一つの町を築き上げてきた。その町は海辺にあり、奇妙なことに、夢とは思われないほどの現実感を伴っているのだった。剛は、幼い頃、両親に連れられて行ったことがある町の記憶が夢の舞台となっているのではないかと考え、母に尋ねるが、話の中にその町は出てこなかった。夢の中には、夢の中の自分と親しい女性が現れ、何かを伝えようとしているように剛には感じられた。
一方、横浜に住むOL美貴は、繰り返し見る悪夢に悩まされていた。やはり夢の舞台は地方の海辺の町だった。今や夢の内容は、おぞましい出来事へと発展していた。悪夢が生活に影を落とすまでに悩むに至った美貴は、夢が持つ意味について調べ始めた。そして、その町はどこかに実在していて、理屈を超えて、夢が自分でも思いもよらない何かを自分に告げようしているのではないかと考えるまでになっていた。

 二箇所ある入り口のシャッターがブーンと唸りながら降り始めた。
 いつものことだが、この無骨な音を耳にするとほっとした気分になる。無意識のうちに肩に入っていた力が抜け、張りつめていた緊張が解けていく。
 芝居を無事に演じ終えた役者が舞台の上で幕が下りるときに抱くのもこれに似た気持ちなのではないだろうか。
 とはいえ、まだ、業務が終了したわけではない。終業時刻の五時までにはまだ二時間ある。その日のうちに、当日実行したローンの書類のファイリングやデータ入力、それに明日の実行分の準備を済ませておかなければならない。